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The 政権交代

投稿日  2009年09月24日

 9月16日鳩山政権が発足してからまだ一週間足らず。能力も意欲もある新閣僚や副大臣、政務官の方たちの表情や語り口にはこれからの日本の政治を担うことへの緊張感と責任感が感じられて、私共が今歴史の大きな転換期にさしかかっていることを実感します。
 まえがき でも触れたように、鳩山総理の論文「私の政治哲学」には「友愛」という一つの理念に基づいた世界と日本の在り方への明確な理想が語られていて、好感が持てました。
 戦後の日本で政治家というのは決して尊敬される人々ではなかったと思います。地盤・看板・鞄に支えられて政界に入り、政策を語らずに利権を漁り、国会答弁では官僚の作文を棒読みし、そして政界には常にきな臭いスキャンダルのネタがくすぶっている・・・。私が感じていた政治家たちのこのような卑しさはどこかで戦後の日本の国の在り方の卑しさへと繋がって、真っ当な人間が入る世界ではない、という嫌悪感を禁じ得なかったわけですが、今回、日本にも違うタイプの政治家たちが育っていたではないか、と思った次第で、総理を初め、皆自分の言葉で政策を語っていることに自民党政治との違いを感じます。
 大きなビジョンを掲げる総理の下、それぞれの閣僚が自分の信念に基づいて政策を提言してゆくというかたちは歓迎したいと思います。
 当座は「脱官僚」に多くのエネルギーが注がれることになりそうで、国が大きく方向転換をしようとする時、確かに政治家がリーダーシップを取ることは必要だと思います。けれども国民は政治家と官僚の壮絶なバトルなどは見たくない筈で、官僚を極悪人扱いするのではなく、役割分担をしながら新たな国造りに向かって協働する姿を早く見てみたと思います。

 欧米では鳩山政権を、国民新党と共に社民党と連立を組んだこともあって「中道左派政権」として論じるメディアが多いようで、「日本にも遂に大変化が起こった」と大きな関心を寄せているのが感じられます、
 ヨーロッパでは中道左派の連立政権というのは北欧の国々やオランダ等を初めとして多く見られる政権の形態で、その社会民主主義的な政策によって教育や医療費の無料化を初めとする、弱者に優しく福祉・公共サービスが充実した社会を造ってきました。 日本社会の関心は常にアメリカに向けられているように感じますが、市場原理主義の嵐が吹き荒れた冷戦後の世界でヨーロッパの国々が、イギリスを例外として、必ずしも「小さな政府」や「官から民へ」「規制緩和」といったグローバリズムの処方箋をやみくもに取り入れたわけではありません。安定して手厚い社会保障制度がびくともしていない国が沢山あります。(尚、現在ノルゥエーを除く北欧の国々は、移民問題などを争点に、中道右派政権に交代しているようですが、福祉政策等に変化はないようです)

 剥き出しの競争社会が作りだした格差社会がどれほど社会を歪ませ不安定にするかを痛感した多くの人々が今新政権に期待するのは、とりあえず人々が安心して暮らせる社会の制度設計をもう一度しっかりと立て直すことだと思いますし、その仕事をやってもらう為に国民が民主党に与えた308議席だったと思います。
 その意味で、後期高齢者医療制度の廃止、生活保護母子加算制度の復活、社会保険病院・診療所、厚生年金病院の統廃合・売却の凍結などを、長妻厚生労働大臣が矢継ぎ早に打ち出したことを積極的に評価したいと思います。

 ただ民主党の掲げている政策で気になることも色々とあります。
 まず鳩山総理が国連演説で表明した、2020年までにCO2を1990年比25%削減、という数値目標。国連で日本の総理が堂々と流暢な英語でスピーチを行い、拍手で迎えられるという光景は日本人の一人としてちょっと誇らしい。でも、私はそもそも地球はこれまでも宇宙の営みの一環として温暖化や寒冷化を繰り返してきており、今の温暖化の原因がCO2の排出だけにあるとは到底信じられません。温暖化防止に向けての国際的な枠組みというのも実にトリッキーで、とりわけ金融資本がからむ排出量取引などはマネーゲーム以外のなにものでもないと考えています。この世界に向かっての公約を果たすために日本の国民や企業が重い負担を強いられ、国の体力を消耗することはないのでしょうか。
 日本の省エネ技術は世界最高水準といわれれいるので、日本が主導権をとってこの技術を海外に広めたり、地球に優しい新たな産業を興したり、クリーンエネルギーの開発を行い、国民が協力して、大量生産・大量消費社会からの脱却を図り、資源循環型社会への転換の契機とする、という期待もないではありませんが、したたかな「国際社会」に翻弄されないように、国民にしっかりと情報公開をしながら進んで頂きたいと思います。
 また、高速道路の漸次無料化は明らかにこの政策と矛盾すると思います。確かに流通コストは下がり、高速で走る車はそれほどCO2は排出しないのかもしれませんが、方向性としては、「車社会からの脱却、公共交通機関重視」とか「自転車の奨励」、といった政策のほうが整合性があるのではないかと思います。
 
 少子化対策としての「子供手当」は選挙に勝つためのバラマキであることも否めません。「お金がもらえるなら子供を産もう」などと考える人はむしろ例外だと思います。リストラに怯え、一度会社を放り出されたらなかなかフリーターから這い上がれず、保険も年金もない貧困層にたたき落とされ、母親となったら子供を預けて働くことがままならない今の日本社会では、安心して出産し育児に専念出来る人はむしろ恵まれた人たちです。
 とりあえずはお金、ということになるのでしょうか、早急に、今の社会情況に適合した、女性が安心して子供を産み育てることが出来るしっかりとした社会のシステムを構築していただきたいと思います。
 パートタイマーであっても雇用条件や税制、年金制度が正社員と同じように保証され、週何日、何時間働くかを選ぶことが出来る、という、オランダで始まり、ヨーロッパ中に広まった「ワークシェアリング」を日本でも是非検討していただきたい、と個人的には考えております。尤もこういった制度の導入は政府と行政、そして労使双方が力を合わせなければ不可能です。私共は「経済財政諮問会議」のメンバーの財界人たちが、国のため、国民のためではなく、ひたすら自分たち企業に都合のよい答申を出し続けた過程を見て参りましたが、これからは財界人たちも国民の立場に立った制度の導入に協力していただきたいものだと切に思います。 これが日本の風習になじまない、という考えを持つ人も多いと思いますが、私は常々、日本人の働き方もそろそろ変えて、もっと「生活を楽しむ」「子育てを夫婦が力を合わせて行う」といった生き方も広く認められるべきであると考えてきました。この辺りのヨーロッパ事情についてはまたご報告したいと思います。

 さて前置きが長くなってしまいましたが、実は The 政権交代 というこの文章のタイトルは、17日未明岡田外務大臣が、核持ち込みに関する密約や沖縄返還時の現状回復補償費の肩代わりに関する密約など4点の「密約」について、11月末という期限を区切って調査報告を行うようにという大臣命令を外務省藪中事務次官に対して発した、ということを知ったからです。0時50分からというのも異例ですし、組閣後官邸での記者会見を終えた後外務省に乗り込んで外務省会議室で会見を行った、というのも岡田外相の並々なならぬ意気込みを感じさせます。
 これぞ将に「政権交代」日本に新たな歴史が始まった、と実感できた瞬間でした。
 岡田外相は会見の席上で
「外交というのは国民の理解と信頼の上に成り立っていると考えていますので、そのような意味でこの密約の問題は外交に対する国民の不信感を高めている、結果として日本の外交を弱くしていると思います」
と語っていますが、自民党政治に常にある不透明さを感じてきた私にとって、日本の外務大臣がこのような考え方に基づいて国民との間の信頼関係を構築しようとしていることに胸の晴れる思いでした。
 戦後の日米関係に於いて、政府が国民に説明ができないような事、というのは枚挙に暇がないくらいに色々とあったと思います。そして日本のマスコミはことアメリカに関しては非常に臆病かつ慎重で、国民に真実を伝えることを怠ってきました。
 私がそのことを痛感したのは、「日本の蘇生」という本を書くために色々と調べ初めてからでした。例の郵政選挙で、政府はもちろん、あらゆるメディアが国民に本当は何が起こっているのかを知らせようとはしませんでした。
 日米安保という二国間の、決して対等ではあり得ない軍事同盟の下、政治がアメリカの利益よりも国益を尊重して行われる為には、時に国民へ情報公開を行い、そして国民が声を挙げることが不可欠であろうと思います。
 民主党政権が少しづつでも「対等な二国間関係」に向かって歩んでいって欲しい、と思います。

 戦後の日米関係について、また冷戦終結後の日米構造協議以降、日米間で何が起こっていたか、何故今日本が莫大な財政赤字に苦しんでいるのか、を少し書いてみたいと思うのですが、すでに長くなってしまったので次回へまわすことに致します。


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